2025年5月13日
不登校の子どもを孤立させない
~教育・福祉・地域でつながる支援まとめ~
※ひとり親支援協会(エスクル)では、ひとり親LINEグループの、不登校の子を持つひとり親グループにて様々な情報共有などをおこなっています。(詳細はコチラ)
大型連休明けの5月は、夏休み明けと並んで、1年で最も不登校の子どもが増える時期です。
不登校の小中学生は年々増え、2023年度は34万人を超えました。
特にひとり親家庭で子どもが不登校になった場合、学校以外の居場所確保と支援ネットワークの構築が非常に重要です。
多くの保護者が「学校以外の選択肢はあるのか」「どのような支援が利用できるのか」と不安を抱えています。
実は不登校の子どもたちのための支援サービスは教育や福祉などさまざまな分野に存在していますが、それらがどのような状況で効果的か、どう組み合わせると良いかという情報は意外にも整理されていません。
不登校の子どもへの支援は、その状況や段階によって必要なアプローチが異なります。
この記事では、臨床現場での多くの事例経験を基に、不登校の各段階と、それぞれの時期に適した支援サービスについて詳しく解説します。
医療機関での支援と合わせて、これらのサービスを効果的に活用することで、お子さんの回復への道筋が見えてくることも少なくありません。
なお、ここで以下に出てくる不登校の段階はあくまで分かりやすさのための目安ですので、柔軟に捉えてください。それでは、実際にどのような支援サービスが利用可能なのか、見ていきましょう。
◇ 予防・早期発見段階(不登校の兆候が見られ始めた時期)
不登校は突然始まるわけではありません。多くの場合、幾つかの予兆が現れます。この段階で適切な支援を開始することで、状況の深刻化を防ぐことができる可能性が高くなります。
(主な状況)
遅刻や欠席が増え始める、体調不良の訴えが増える、学校での様子に変化が見られるといった兆候は不登校の初期のサインとして注意が必要です。特に、それまでになかった頭痛や腹痛の訴え、教室に入りづらい様子、友人関係の変化などは心身の不調のシグナルかもしれません。
(推奨される支援サービス)
1. スクールカウンセラー
スクールカウンセラーは学校に配置された心理の専門家です。早期の段階から本人の心理状態を専門的な視点でアセスメント(評価)し、適切な支援方針を提案することができます。
また、保護者の相談にも応じ、家庭での対応方法についてアドバイスを行います。教職員とも連携し、学校全体で支援体制を整えていく役割も担います。基本的に非常勤であるため、面談の頻度が確保しづらいという現実があります。
2. 別室登校の活用
教室という大人数の空間に入ることが難しい場合、別室での学習を選択肢として提供することで学校とのつながりを維持することができます。保健室や相談室など、比較的静かで落ち着ける環境で過ごすことで徐々に学校生活に適応していくことを目指します。学校によって運用の積極性には差がありますが、最も現実的な対処法として認識されています。
3. オンライン学習支援
ICT(情報通信技術)を活用した支援として、教室での授業をリアルタイムで別室や自宅に配信するシステムを導入している学校も増えてきています。これにより、教室に入れない状況でも学習を継続することが可能となり、学習の遅れに対する不安を軽減することができます。
◇ 初期対応段階(不登校が始まって間もない時期)
この段階では、不登校の状態が明確になり始め、より具体的な支援が必要となります。早期の適切な対応は、状況の改善に大きな影響を与える可能性があります。
(主な状況)
継続的な欠席が始まり、学校に行けない不安や苦痛が明確になってきます。また、昼夜逆転など生活リズムの乱れが出始めることも特徴的です。この時期は、本人も家族も強い不安を感じやすく、適切な専門家のサポートが重要となります。
(推奨される支援サービス)
1. 教育センターによる相談事業
教育センターは、各地域の教育委員会が設置する公的な専門機関です。専門性の高い教員や心理の専門家による詳しいアセスメントを行い、その子どもに合った具体的な支援方針を検討します。無料で利用でき、継続的な相談や支援、心理カウンセリングや軽微な活動の提供なども可能です。
保護者の方の不安や悩みにも丁寧に対応し、具体的な対応方法についてアドバイスを提供します。一般的な認知度は高くありませんが、積極的な利用が推奨される施設です。
2. スクールソーシャルワーカー
スクールソーシャルワーカーは、福祉の専門家として、子どもを取り巻く環境全体に働き掛ける専門職です。家庭環境や学校環境の調整を行い、必要に応じて福祉サービスの利用を提案するなど、包括的な支援を行います。
特に、経済的な問題や家族関係の課題がある場合には、早期からの関わりが効果的です。
3. 通級による指導
通級による指導は、普段は通常の学級に在籍しながら特別な指導を受けられる制度です。専門性の高い教員が個別指導(本人の望む活動や遊びも含む)を通じて学習支援を行うとともに、集団生活への適応力を段階的に育てていきます。学校との関係を維持しながら、必要な支援を受けられる方法として有効です。
比較的容易に利用することができ、通級指導を楽しみに通う不登校傾向の子どもも多く存在します。
◇ 中期支援段階(不登校が継続している時期)
不登校が継続すると、新たな課題が出てくるとともに、支援ニーズも変化してきます。この段階では、より包括的で長期的な視点に立った支援が必要となります。
(主な状況)
欠席が長期化し、心理的な課題がより明確になってきます。特に、学習の遅れへの不安が大きくなり、将来への漠然とした不安を感じ始める時期でもあります。また、生活リズムの乱れが定着したり、家族関係にもさまざまな影響が出てきたりすることがあります。
(推奨される支援サービス)
1. 教育支援センター(適応指導教室)
教育支援センターは、公的機関が運営する学校外の学習支援施設です。一般的に「適応指導教室」とも呼ばれ、不登校の子どもたちの重要な居場所となっています。公的な準フリースクールといった立ち位置であり、学校への出席扱いとして認められます。
また、在籍校との連携を重視しており、定期的に学習の進度や子どもの様子について情報を共有し、学習内容の調整を行います。これにより、将来的な学校復帰を視野に入れながらも、現在の子どもの状況に合わせた柔軟な支援が可能となります。
教育支援センターでは、学習だけでなくさまざまな体験活動や創作活動も重要な支援の一つとなっています。絵画や音楽、陶芸などの創作活動、季節の行事やスポーツ活動など、多様な活動を通じて自己表現の機会を提供します。これらの活動は、子どもたちの興味関心を広げるとともに、達成感や自己肯定感を育む機会となります。
施設には、専門性を持った教員など経験豊富なスタッフが配置されています。彼らは日々の活動の中で子どもたちを見守りながら、必要に応じて個別の心理的サポートも提供します。
2. 放課後等デイサービス
放課後等デイサービスは福祉サービスの一つで、生活能力の向上のための訓練や居場所を提供します。「放課後」という名称が付いていますが、運用は比較的柔軟であり、事業所により日中の時間帯でも利用が可能な場合が多くあります。
学童保育と違い、専門的な支援者が社会性を育むためのグループ活動や、生活習慣の形成支援、コミュニケーション能力の向上を目指した活動、創作活動や運動プログラムなど、さまざまな支援を提供しています。名前が放課後となっていることにとらわれず、積極的な利用を検討することができます。
3. 子ども家庭支援センター
こども家庭支援センターは、子どもと家庭に関する総合的な相談窓口です。家族全体を視野に入れた支援を行い、必要に応じて家庭訪問なども実施します。特に、きょうだいがいる場合など、家族全体への影響を考慮した支援が必要な際に有効です。
◇長期支援段階(不登校が長期化している時期)
不登校が1年以上継続すると、支援のあり方もより包括的なものが求められます。この時期には、学習面での遅れや社会性の発達、将来への不安など、複数の課題が重なってくることが多くなります。そのため、より専門的で体系的な支援体制が必要となってきます。
(主な状況)
不登校の長期化に伴い、二次的な課題が顕在化してきます。例えば、昼夜逆転の生活リズムが定着したり、家族関係に難しさが生じたりすることがあります。また、進学や将来の進路に対する不安が強まり、本人も家族も具体的な方向性を見いだせない状況に悩むことが多くなります。
(推奨される支援サービス)
1. 発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害傾向を持つ不登校の子どもたちへの支援も行っています。特に学習や対人関係、感覚の特性など、さまざまな面での困難さについて専門的な視点からのアセスメントと支援を提供します。
心理検査などを通じて子どもの特性を総合的に理解し、その子どもに最も適した支援方法を探ってくれます。家族に対しても、子どもの特性に応じた関わり方についての具体的なアドバイスを提供してくれます。
2. フリースクール
民間のフリースクールは、従来の学校教育とは異なるアプローチで、子どもたちの学びと成長を支援する民間施設です。近年では、教育機会確保法の制定により、その重要性が法的にも認められています。
子どもの興味関心に基づいた柔軟な学習プログラムを提供し、少人数制での活動による丁寧な個別対応が特徴です。また、体験学習や野外活動など、実践的な学びの機会も豊富に用意されています。地域にもよりますが、フリースクールでは、在籍校と連携して出席の扱いになる場合もあります。
3. 市町村、民間単位の「子どもの居場所」提供サービス
昨今の不登校児童生徒の増加や社会に適応しづらい子どもや若者のための居場所を提供する事業が、公共サービスや民間のサービスとして広がりを見せています。統一した呼び方はないため検索するのが難しい状況ですが、インターネットを通じて丁寧に探せばお住まいの地域で見つけることができます。気軽に参加できるサービスであり、同じ境遇にある友人を見つけることも可能です。
4. 特別支援学級
特別支援学級は、通常の学級とは異なり、より個別的な支援が可能な少人数制の学級です。個々の子どもの特性や学習状況に応じた「個別の教育支援計画」を作成し、それに基づいた丁寧な指導が行われ、一人ひとりの学習のペースや理解の仕方に合わせて授業を進められます。
また、ソーシャルスキルトレーニングなど、社会性を育むための特別な指導も行われます。進路指導においても、子どもの特性や希望を踏まえた丁寧な支援が提供されます。
5. 特定相談支援事業所によるケアマネジメント
特定相談支援事業所は、複数の相談事業所にまたがる福祉サービス(放課後等デイサービス、日中一時支援など)を効果的に組み合わせ、包括的な支援体制を構築する役割を担います。
相談支援専門員が中心となって本人や家族の希望を聞きながら、具体的な支援計画を作成します。また、学校卒業後の就労先の提案や障害年金の利用など人生計画全体についてのアドバイスや支援を受けることができます。
◇支援を実際に組み立てる
不登校のこどもたちが利用できるサービス資源は教育系、福祉系、行政系、民間系と多岐にわたります。しかし残念ながら、これらすべてを踏まえた個別適切な支援をワンストップで提案してくれる機関は現状では存在しません。教師も教育系サービス以外については詳しくないのが現実です。
スクールソーシャルワーカーが唯一全体像を理解している存在と言えますが、最終的には保護者自身がそれぞれのサービスについて具体的に調べ、理解を深めていく必要があります。
また、支援を考える際には、子ども本人だけでなく家族全体の状況も重要な考慮要素となります。保護者の就労状況、きょうだいの有無、日中に家にいる家族がいるのか、その他さまざまな要因を総合的に踏まえて支援を活用していく必要があります。
不登校に悩む子どもたちは他者との交流自体を避ける傾向にあるものの、子どもの特性に合った(本人が受け入れることができる)サービスに出会うことができれば、今後の社会参加のための大きな支えになることは確実です。(5月12日付時事メディカル)
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