寡婦(夫)控除と遺族年金の概要と

男女格差について

 

 

<寡婦(夫)控除とは?>

 

 寡婦(夫)控除とは、一定の金額を所得から差し引くことができる所得控除です。

 

 

<控除できる金額と条件>

 

 

 男性の場合は金額の大きい特定寡夫控除というものは存在しません。

 

 一方、女性は同じ要件であれば、「特定寡婦控除」を受けられ、所得税35万円、住民税30万円が所得控除され、男女格差が生じます。

 

 また、所得制限についても男女で格差があります。

 

 

<遺族年金とは?>

 

 遺族年金とは、国民年金法と厚生年金保険法等を元に、被保険者が死亡した際、残された遺族に対して支給される日本の公的年金のことで、現在は遺族厚生年金と遺族基礎年金の2種類が運営されています。遺族が以下であるとき受給できます。

 

  • 遺族基礎年金
    • 子供(18歳未満)のある配偶者
    • 子供(18歳未満)
  • 遺族厚生年金
    • 子供・孫(18歳未満)
    • 夫・父母・祖父母(死亡時に55歳以上の者)

 

 

<遺族厚生年金の男女格差>

 

 遺族厚生年金の支給対象者は、以下の優先順位となります。

(1)子のある妻、子のある55歳以上の夫
(2)子
(3)子のない妻、子のない55歳以上の夫
(4)55歳以上の父母
(5)孫
(6)55歳以上の祖父母

 

 遺族基礎年金は男女格差はありませんが、遺族厚生年金には男女格差があります。

 

 例えば、夫30歳・妻30歳の共働き家庭のケースを考えてみます。夫が亡くなった場合、妻はその直後から遺族厚生年金を受給することができます。ところが、妻が亡くなった場合、「死亡時に55歳以上」という要件を満たさないので、夫は遺族厚生年金を一切受給することができません。

 

 その上、「中高齢の加算」でも男女差別が存在します。死亡者の配偶者が一定の要件を満たす40歳以上65歳未満の「妻」であれば「中高齢の加算」として遺族厚生年金に上乗せがありますが、「夫」の場合は上乗せは一切ありません。

 

 またここでは説明を省きますが、遺族補償年金(労働災害)、厳密には遺族年金ではありませんが、寡婦年金についても男女格差があります。

 

 つまり亡くなったのが夫と妻では、受給額が大きく変わるのです。男女平等が叫ばれる中、客観的に見て不平等を感じます。

 

 

<男女格差へのエスクルの対応>

 

 法律が制定されてから時間が流れ、世の中は変化してきましたが、それに法が追い付いていないと感じます。

 

 寡婦(夫)控除と遺族年金の男女格差は、一般社団法人 ひとり親支援協会の立ち上げとあわせて、産経新聞に取り上げていただきました。(詳しくはコチラ

 

 また、男女平等のもと格差是正を政策要望しており、今後も取り上げていきたいと思います。(過去の提言はコチラ

 

 

<未婚の母の格差>

 

 未婚の母は、寡婦(夫)控除の対象とならないため、死別、離別に比べ税金が高くなり、保育料や公営住宅の家賃などの負担も多くなります。

 一部の自治体では、保育料などの基準となる所得を算定する際に、未婚のひとり親も「寡婦(夫)控除」を適用されたとみなす「みなし適用」がありが、みなし適用の範囲は自治体によって異なるなど課題があります。

 

 (追記)未婚の母への支援拡充に必要性についてコチラにまとめましたので、よろしければご覧ください。

 

 

 寡婦(夫)控除の詳細については以下の国税局ページをご覧ください。

 https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/1170.htm

 

 遺族年金の詳細については以下の日本年金機構のページをご覧ください。

 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-03.html